散歩
2024/10/30 17:27:41
最近、家に着くと暗くなっている。
夕刻と夜の狭間を車で移動している。
夕日の赤が漆黒に変わり、そこに星が散らばる。
ほんの数時間で景色が変わる。
こうして文字に起こすと、とても不思議など気持ちになる。
帰宅後、近所を散策する。
寂れた通りに銀杏の葉が落ちている。
風が冷たいと感じると同事に、落ち葉がコロコロと道路を軽快に転がる。
街灯が等間隔に並ぶ通りは、たまに人とすれ違う程度で、車の行き来もほとんどない。
静かだが人の生活の気配を余韻のように感じる通りだ。
『疲れたな・・・』
『今日は一回もX(旧Twitter)に投稿してないな。何か呟くか・・・』
『私の幸せって何だろう』
『もう全部どうでもいいな・・・』
連結しない思考がふわふわと宙を舞う。
住宅が建ち並ぶ通りには古い家も新しい家も豪邸も存在する。
ここには人それぞれの日常があるのだろう。
そこにゴミのようにたまった思考を捨てていく。
暗い住宅街を抜け、川沿いの道を進む。
川の流れる音を聞くと亡くなったおばあちゃんと行った温泉を思い出す。
もう二度と戻らない暖かい時間を思い出す。
心地良い川の音を聞きながら、ゆっくりと歩を進めるといつもの景色が見えてくる。
一気に現実に引き戻される。
これから洗濯して、ご飯作って、ポンポコリンの面倒見て、掃除もしないと・・・。
そんなことを考えながら、家路を急ぎ、アパートの前につく。
ガチャリとドアをあけると蛍光灯の灯りが冷たく感じる。
でも、そこには暖かい存在がいる。
『にゃ~』とまとわりついてくる彼を抱き上げる。
冷えた体にふんわりとした暖かさに安心感をおぼえる。
そして、冷たく感じた蛍光灯の灯りが暖かさに飲み込まれていく。
物があちこちに散乱している部屋のすべてが暖かさに包まれ、馴染んでいく。
外は暗闇、星が散らばるきれいな夜空。